現国で100点以外とったことのないhedgehogxですこんにちは。あ、でもさすがに京大の現国は100点とれなかった。
という、なんかもうしょっぱなから読解力の皆無感を醸し出す一文からこの記事を始めます。でもほんとに現国は100点以外とったことないし国語に限らず偏差値65以下は見たことすらないです。
この記事を一部誤読する人がいたので、追記修正しました。
文脈に依存する文章は読解力のない人には正しく読み取れないため、やはり複数の解釈を許しうる設問は悪文であり駆逐すべき、というよい証明になりましたね。
でもってなんだかいろいろ言われてる中学生の読解力テストの文章問題、やっぱあれ不適切問題だと思う。あんな問題が平然と出題される国語教育は全体的に迷走しててほんとくだらない。
そもそも日本語教育自体が迷走しまくってて理論的な文章のルールがまるで定まっていないので込み入った話は日本人同士でもアメリカンイングリッシュでやるかいっそプログラム組んでしまうと便利。これ豆な。
この記事のもくじ
なにやらこちらの方はこの問題は不適切問題だと言っていて
www.nasnem.xyz
こちらの方は不適切問題ではないと言っているらしいです。
mubou.seesaa.net
さて本題なのですが、まず
2つの文の指す意味は同じかどうか
という設問自体があいまいすぎる。
出現順は意味を変えるかどうか問題
- Aや、BやC
- CやB、A
これ順番と句点しか違わないけど、意味全然変わるよね。
追記1
ここまで懇切丁寧に解説しても「国語に順番なんて関係ない」と主張する人はごんぎつねの最後のシーンを読み返してください。一切の余分な解説を加えず出現順序のみによって物語全体のテーマひっくりかえす非常に有名な例題で、叙述トリックとしても秀逸です。読み返しても兵十のことを「ごんのせいで死ぬ直前の母親の望みをかなえることができなかったかわいそうな青年」だと思ってしまう人は読解力云々を語る資格がないので恥をかかないよう黙っているほうがいいです。
追記1ここまで。
問題文をシンプルにしてみると
- 牛肉や、緑茶や日本酒は好調だ。
- 日本酒や緑茶、牛肉は好調だ。
ほら違うじゃん。だいたい同じだけどぜんぜん違うじゃん!1番だと牛肉メインで、2番だと日本酒と緑茶がメインになる。
こういうこまやかな違いから作者の意図を読み取っていくのが国語教育。
こういう違いが理解できないと「ごんぎつねのラストで兵十とごんは和解した」とか誤読するんだよバーカ。
例文1と例文2は、「AとBは好調だ」と「BとAは好調だ」といれかえているだけであって、意味としては「同じ」と判断できる
中高生の読解力テストの問題は特に悪い問題ではありません: 不倒城
としている人がいて、確かに現在の国語テストではそれがスタンダードとなってしまっているが、これは自然言語をあまりに乱雑に扱いすぎている。
これが計算言語だったら
- 牛肉,緑茶,日本酒
- 日本酒,緑茶,牛肉
という二つの文の意味は一致する。でもこれ数学じゃなくて国語でしょ。自然言語なんだから完全な並列表記はあえない。先に言うか後に言うかで意味づけが変わると判断するのが正しい。いまどきgooglebotだって単語の出現順を評価してるのだから人間様はもう少しがんばったほうがいい。
だから中学生の読解力テストの出題である
- 輸出が伸び悩む中でも、和牛が人気の牛肉や、和食ブームを反映した緑茶や日本酒などは好調だ。
- 輸出が伸び悩む中でも、和食ブームを反映した日本酒や緑茶、和牛が人気の牛肉などは好調だ。
は、これがもし理系論文であれば「同じである」が正解としても間違いではないかもしれないが、文学作品であれば「違う」が正解。むしろこれを同じであると感じてしまうのは致命的に国語力が低い。
もう少し文学っぽい例題にしてみると
- 私は父や、母や兄を殺したい
- 私は兄や母、父を殺したい
これを同じだと思うのは鈍感すぎくね?1番と2番では父に向ける殺意が違いすぎる。1番の父逃げて超逃げて。
だから単語の出現順の違いを意味の違いとみなすか否かについては、そもそも現在の国語教育が言語を擬似的な計算言語として使用しているのか、それとも自然言語として使用しているのかの二つを混同している点が問題。
でもよく考えたら論文だって「牛肉、緑茶、日本酒の相関関係」というタイトルであれば本文中でも「牛肉、緑茶、日本酒」の順に揃えないとリジェクトされるので、やはりこの問題が自然言語で書かれている以上どのような文脈であれ単語の出現順が変われば意味も変わる。
読点で文章は区切られるルールは存在するかどうか問題
一般的には、読点で区切られている部分で言葉の関連は一旦切り離されます。
中高生の読解力テストの問題は特に悪い問題ではありません: 不倒城
追記2
えー?そんなルールあったっけ??文法の教科書に載ってたかなぁ?
たしかに『一般的には』そういう傾向もあるけどそんな厳密なもんじゃなくない?もし動詞の活用並みに厳密なルールが存在するならソースください。
↑ここ、誤読する人がいたので修正します。
単語の関連は独点で区切られる傾向は存在するが絶対のものではなくほかの用法もありえる。またどの用法を採用するかは作者の裁量にゆだねられている。というのが文法の教科書に載っている内容です。読点の使い方は作者の気分次第です。ノリと雰囲気で変わるあいまいルールは、試験の正誤を決定しうる根拠になりません。
また、この設問が適切であると判断するためには、読点で文章は区切られるルールが常に厳密に適応されるという前提が必要です。指摘したように文法学者によってその前提は崩されているのですが、かりに前提を適応したとすると今度は『など』の扱いが変わります。
- 輸出が伸び悩む中でも、和牛が人気の牛肉や、和食ブームを反映した緑茶や日本酒などは好調だ。
- 輸出が伸び悩む中でも、和食ブームを反映した日本酒や緑茶、和牛が人気の牛肉などは好調だ。
シンプルに書き直すと
- 牛肉や、緑茶や日本酒など
- 日本酒や緑茶、牛肉など
読点をはさむと「など」の効力が切れるルールを適応すると、1番の「など」は緑茶と日本酒にかかり、2番の「など」は牛肉にかかります。よってこのルールがいついかなるときも厳密に適応されると仮定してもやはりこの二つの文章は同じではありません。
てなわけで、駄文であれば3行で収まった文章が良文にするとこんなボリュームになります。よって文脈を読むという意味での読解力はとても大事。
追記2ここまで。
上記の例文だと、「和食ブーム」と「緑茶や日本酒」を直接関連づけているので、後者の文章よりも言葉同士の関連が強くなります。
中高生の読解力テストの問題は特に悪い問題ではありません: 不倒城
ほら自分でも「だいたい同じだけど完全に同じではない」って言ってるじゃん…
「前者より後者のほうが言葉同士の関連が強くなる」ということは前者と後者は意味が違う。よって「二つの文章が示す意味は同じではない」。少なくとも、人間が使用する言語においてはこのルールが適応される。
ということで、この問題のどこが悪文かというと、「同じ」の意味が定義されていない点であり、つまり自然言語のルールと計算言語のルールを混同している現在の国語教育自体がおかしいということになります。
しんざきさんはこの問題文をシンプルな計算言語に近いものであると捉えました。
めしがくいたいさんはこの問題文を国語、つまり自然言語の問題であり文学の問題であると捉えました。(ところでめしがくいたいの著者はめしがくいたいさんでよいのでしょうか。そしてしんざきさんのケーナはアンデスで春に吹くあれなのでしょうか。)
センター試験でればしんざきさんが正解ですが、もしこの問題文が京大の入試であれば、めしがくいたいさんが正解になりそうです。
ですがこの問題文には、そして現在の国語教育では、その二つのうちどちらの解釈を優先すべきかの基準を明確にしていません。ですのでこれはどちらも正解で、悪いのは役立たずの文科省です。
厳密に考えるなら、これがプログラミングではなく言語のテストである以上めしがくいたいさんが正解ですが現状ではしんざきさん並の雑な分析がまかり通っていますし言葉を雑に扱っても問題ない分野の人であればしんざきさんレベルの読解力で十分なので、これが中学生の読解力を測るという目的を鑑みた場合しんざきさんも正解だとしてもさしつかえないのではないでしょうか。
でもこれ、中高生の学力評価には別に関係ない
ちらっと統計を見ただけですが、この問題文の正誤の比重は小さく、正解でも間違っててもわりとどうでもいい位置づけっぽいです。どうでもいい重箱の隅を手斧で粉砕する、はてなーの真骨頂です。すばらしい。そういうところ嫌いじゃない。