バニラエアが車椅子の人の搭乗を渋ったから自力で階段を這って上った件、叩かれてますね。
「車椅子は周りに迷惑がかかるから事前連絡すべき」という意見がまるで常識的なもののように扱われてるけど、これどんなに無茶な要求をしているか、分かってます?
まぁ、飛行機に乗るという非日常であれば事前連絡するのもそんなに手間ではないでしょう。また飛行機はバスや電車に比べて事故のあったときのリスクが段違いですから他の人の安全のためにも連絡してほしいというのもあります。そういう意味で今回の木島さんは航空会社に連絡したほうがよかったかもしれません。
その主張をする人のイメージは、飛行機に乗るという年に何回もあるわけではない珍しいイベント時くらい連絡すべき、というものなのでしょう。
車椅子の人の生活って想像したことあります?
一歩家から出るだけでも誰かの許可がいるんですよ。
まず自分の家の玄関の扉を開けてもらわなくてはいけない。自分の家の玄関の段差を誰かに下ろしてもらわなければいけない。駅までいく福祉タクシーを予約しなければいけない。福祉タクシーに乗せてもらう人を手配しなければいけない。どの駅に何時に乗ってどの電車に乗ってどの駅で降りどこの出口で外に出るか連絡しなければいけない。目的地までに階段があるなら上り下りさせてくれる人を手配しなければいけない。目的地までに細い路地があるなら幅を調べて車椅子が通れるか調べなくてはいけない。目的地の建物の階段やエレベーターを調べてもし階段であれば上らせてくれる人を手配しなければいけない。エレベーターがあるとしても古いエレベーターだと車椅子が入らなかったりするから型番まで聞かなくてはいけない。
もちろん、帰りはこの逆をやります。ちょっと外出するだけで一体何本の電話をしなければいけないでしょうね?
これらを一つ残らず抜かりなく完遂しなければ「車椅子のくせに事前連絡しない迷惑なクレーマーのプロ市民」なんてディスられるわけです。
これを一生です。
車椅子の人は事前連絡すべき、という意見を、取引先に訪問する際に電話一本入れる、みたいな常識と一緒にしないでください。
社会人だったら取引先に訪問する前にアポをとります。木島さんだって航空会社にメールするだけなら別に普通にやったでしょう。乙武さんだってレストランに電話一本入れるくらいであればやったでしょう。
でもそうじゃないんです。莫大な事前連絡が必要な中で一つ二つ取りこぼすことはある。そしてその一つ二つを叩かれ社会人としての常識まで疑われる。そんな状態であれば、そもそも家から出るだけでこんなに連絡しなきゃいけないんだ、バリアフルな社会が悪いとなるのはあたりまえでしょう。運動家になるのもあたりまえ。そして障害者の事前連絡と健常者の事前連絡を混同して叩き一向に変わらない社会を変えるためには、炎上させるくらいしか方法が無い。
でも今回の木島さんのように炎上させると、障害者をプロ市民と揶揄する人はますます意固地になるでしょう。だから彼らに分かる言葉でプレゼンして差し上げる必要があります。
てことで、障害者は一歩外に出るだけでめちゃくちゃ手間がかかるんだよ、あなたが車椅子になったときにそんな生活に耐えられますか?みたいな方向性のキャンペーンをしていくのがマイルドで現実的かなぁと思います。