なにかと話題になっている経産省の次官若手ペーパー。
これを読んで一瞬納得しかけてしまったけどいまいちモヤモヤが残るという人向けに一体これの何が問題なのかを分析してみた。
http://www.meti.go.jp/committee/summary/eic0009/pdf/020_02_00.pdf
次官若手ペーパーの内容ざっくりまとめ
まず、次官若手ペーパーを頭悪くまとめてみた。
- 年寄り多すぎ、本人も周りも望んでいない無駄な延命治療多すぎ
- 子供少なすぎ、子育て世代貧乏すぎ
- 誰も望んでいない無駄な延命はやめて子供支援に回そうぜ
- もちろん望まれてる延命はちゃんとやるぜ
通産省の若手官僚さんたちはざっくりこんなことを主張してるらしい。
ちなみにもっと頭よくしっかりまとめてくれている方がこちら。
hirokimochizuki.hatenablog.com
問題点1 表面上はマトモっぽい
これ、引用されている統計が正しいかどうかという点はおいておくとして、少なくとも文章だけ読めばそんなにおかしな理論を展開してはいない。
べつに「年寄りは死ね」とか「年寄りに医療は必要ない」とか言っているわけではない。ただ「本人が望まない延命治療はやめよう」と言っているだけ。
患者本人の意思が完全に無視され、誰も望んでいない苦行のような延命が蔓延している現代日本の医療現場を知っている関係者なら諸手を振って賛成したくなる内容だ。人には生きる権利と同様死ぬ権利もある。だが残念ながら現代日本の医療現場で死ぬ権利は十分に保障されているとは言いがたい。
尊厳死やリビングウィルについてはそれはそれでしっかり考えるべき問題だ。
「あらゆる手段を使って生きたい」と思っている多くの方々の意思も、尊重されるべきことです。一方、チューブや機械につながれて、なお辛い闘病を強いられ、「回復の見込みがないのなら、安らかにその時を迎えたい」と思っている方々も多数いらっしゃいます。
日本尊厳死協会
次官若手ペーパーは内容だけみると正論で、だからこそすごくきもちわるいし違和感が残る。
問題点2 発言の出所
経産省の次官若手ペーパーは表面上は至極まっとうな問題提起となっている。
ピンピンコロリ、健康でなくなったらあっさり死にたいと願う人は多いだろうから、この内容自体には賛成する人も多いだろう。だけど、問題はこの発言が官僚から出たものであるというところだ。
官僚や政治家は政治や行政をつかさどるわけで、彼らは法律や憲法といったルールを作り、ルールをどのように適用するか決める、いわば国民の生殺与奪を握っている人達である。
「尊厳死を望む人だれもが尊重される社会を目指そう」と民間の社会運動家が発言するのと、官僚が発言するのでは全く違う意味になる。経産省の官僚にとって尊厳死のススメとは即ち「医療費切り詰めるぜ」であり「尊厳死ゴリ押しするぜ」という意味になる。
同様に、「家族を大事に」と民間人が発言するのと憲法に明記するのでは全く意味が違う。憲法の家族条項を改変するということは即ち「障害があったり高齢だったりする家族を扶養しない奴は犯罪者として捕まえちゃっていいよね」という意味になる。
どうもその辺、一般用語と法律用語を混同してる人がいっぱいいるっぽい。
小学校の教室に張り出されている学級目標と法律や憲法を混同してるからこそ、今回の経産省若手ペーパーにだまされるし、共謀罪や自民党改憲草案を支持してしまうのだと思う。