これ釣りなのか本気なのかちょっとよくわからないんだけども。
日本の皆さん、そんな命張って仕事してるんですか？ - 子育て向いてないぼっちゃんママの研究記録
リベラルは現実を知らない、法律や憲法や形而上の理屈ばかりこねて本当に困窮したときに助けてなんかくれない俺たちを見下している頼りになるのは安部やトランプなんだ、という人が不可解でならなかったのですけど、こういうのを読んで少し理解できた気がするので、自戒をこめて思ったことをまとめておく。
まずこの作者の目的がよくわからない。
自分自身や自分の属する陣営を鼓舞する目的で仮想敵を作ってぶっ叩くのは身内に対しては有効な手段ではあります。人は不安を直視せず外部に理由を求めることで安心するから、感染の危険を理解せずに外出する頭の悪い人達という仮想敵を作ってぶっ叩くことで自分の不安を紛らわせるのは一定の効果がある。あまり知性を感じない方法ではあるけれども。
でもこの方法は身内のヨシヨシと引き換えに他人の逆鱗に触れる方法でもあります。
この人がやりたいことが、仮想敵を叩くことで自分や身内の不安を紛らわせることであればこの文章は成功ですが、感染の危険を省みずに通勤通学する人達の行動を改めさせるという点に関しては残念ながらこの文章は逆効果にしかなりません。いったい何がしたいの？
この記事では「日本人はウイルスをナメているから、自分の頭で考える能力がないから、この非常時に平然と外出するのだ」という主張をしています。その対策として「自分の頭で考えて同調圧力を跳ね返して仕事を休め」と言っている。
「お客さんが来るし上司の命令だから仕方ない」というのはただの愚痴です。（中略）
その仕事を選択したのは自分ですし、仕事を続ける選択をしたのも自分です。自分の選択であって誰かのせいではありません。
これは一見進歩的に見えてその実非常に日本的、同調圧力的です。インパールのときから何も進歩していない。この人は自分が大本営発表と同じレベルのことを言っていることを自覚しているのかどうか、気になるところです。
仕事がなくなる、お金がなくなる
わかります。世界中が同じ状況で多くの人が同じ不安を抱えています。繰り返しますが、全ては自分が選択した行動であって、自分が感染を拡大させている可能性があることを自覚してください。
感染を拡大させないために家にいることで、仕事が無くなりお金が無くなるという多大なデメリットがあるわけですけどもそれに関しては「全ては自分が選択した行動」と放り出す。
そうなんだ、じゃあ私は自分で考えて自分で選択して自分の責任において普通に仕事行くね。その結果あなたにコロナを感染させるかもしれないけど、それは私と接触するという選択をしたあなたの責任で、あなたの選択であって誰かのせいではありません。間違っても医療機関に頼ったりしないでくださいね。感染はあたなの責任ですから。
「自分の頭で考えて同調圧力を跳ね返して仕事を休め」は「自分の頭で考えて（その結果私と同じ結論になり）同調圧力を跳ね返して（発生するデメリットは全て自分で引き受けて）仕事を休め（私に迷惑をかけるんじゃない）」ですよね？そこのところ自覚はあるのだろうか。
この人の目的が感染予防のために多数の人が仕事も娯楽もやめてひきこもること、であれば、必要なのは「自己責任でリスクは全て引き受けろ」ではなく「ひきこもれるだけの保障を、社会変容を、withコロナの世界はどうあるべきか、そのために何ができるか」を考えること、そしてなぜ自分はコロナでの死を過剰に見積り経済での死を過少に見積もろうとしているのか、自分のバイアスを見つめることです。自己責任を叫ぶだけなら肉屋にすり寄る豚でしかない。
たぶんこの人の根底には自分や身近な人の死への恐怖とか、思い通りに動かない大衆への苛立ちとか、なにかそういう突き動かす感情があって、それがこういう文章になったのではないかと思います。負の感情と向き合うことは難しいことです。まずその感情を（どういった形であれ）形にできたこと、そしてお仲間から認められたこと、それはたしかに第一歩ではあって、そういう意味でああいった記事は無駄ではない。でもそこに留まって仮想敵を叩いているだけでは事態が悪化する一方です。これは非常時です。いつもの平和なはてな村でたのしくマサカリを投げ合っているのとはわけが違うのです。
自分は何にいらだっているのか、恐れていることは何なのか、その恐れに同調しない他者は世界をどう捉えているのか、それぞれの人がそれぞれの立場で考え発信してゆく必要があるのではないでしょうか。
まぁ死の恐怖とかちょっと私にはよくわからないところですけども。自粛とか、もとから死にかけひきこもりなんで常時セルフロックダウンですし。守るべきものが多い人は大変だね。
