この言葉はインセルな人達にとってキモいとか生理的に無理なんていう優しい言葉では追いつかないくらい厳しい言葉だと思うんだけど、そういう言葉がインセル側から出てきたことは興味深い。
「私は私の負の性欲に基づいてお前を拒絶する」と言われたらもう明確に拒絶でしかない。私に性欲が無いからとか私が能動的でないからとかではなく、私は能動的に欲情する相手を選んでいて、そしてその相手はお前ではない、私が私であり続ける限りお前を選ぶことは永遠に無いという意味から逃れようがない。女性が女性の意志で行動し他人を選別しているということをこれほど明示的に認めたインセル用語がかつてあっただろうか。
性的な被害にあった人に「お前は負の性欲によって相手を拒絶したんだ」と言うのは「お前は主体的能動的に自身の身体と精神を守るため行動した」という意味になるので「ほんとは誘ってほしかったんだろ」とか「お前から誘ったんだろ」とかいう被害者の意志を無視したり捻じ曲げたりする言葉に比べたらよほどいい。いや余計なことを言わないのが一番いいけど。
性欲という言葉を使うと、負の性欲を行使する女性はイケメンハイスペック男性にだったら抱かれたくてたまらないおまんこぐじゅぐじゅなのだみたいな変なあれが発生するかもしれないけれど、そこ対しては頭の悪い人が大好きな生物学（笑）を持ちだして来ればどうだろう。
男性はどんな時でも欲情可能だが女性は妊娠出産育児という多大なコストを支払う必要がある。よって女性の性欲はセックスという行為にではなく長期的に安定した環境そのものに向けられている。セックスという行為自体は安定した生活環境を破壊しうる可能性を持つため女性は基本的にセックス行為が嫌いであり男性のような他者の肉体に対する欲情はしない。女性の性欲はセックスそのものではなく、今日は寒いから鍋を食べたいとかウールのセーターはちくちくするから嫌だとか牛乳より豆乳が好きだとかいう日常に偏在する好悪そのものである。
とか。
いやこれは私が今適当に考えたトンデモなのだけど、性欲という言葉に支配欲や暴力欲から承認欲求や素朴にモフりたいモフられたい欲まで都合の悪い物全部を込めてめちゃくちゃな議論をしているなかで、いっそ逆に性欲の積分というか、全ての欲と言う欲を性欲に放り込んで性欲という言葉を崩壊させるという方向性はありかもしれない。
