雑記帳

リベラルでもフェミでもないただの愚痴

藤本タツキ「ルックバック」によせて。突然幻覚と幻聴が起きた時のことを思い出したので書く。

都合悪いことはだいたい忘れる便利脳だけど思い出したので書いておく。

 

死ねとか殺せとか的な幻聴幻覚がやってきたときのことです。

※あくまでn=1

 

 

 

たぶん、「突然声が聞こえる」というのはマリオのスターを取ったような状態だと思う。ほかの人は地面をのそのそ歩いてるのに、私の思考スピードだけが突然速くなってしまう。「声」が最初にあるのではなくてまず「思考の激流」がある。普通「あいつ憎い」と思っても「あぁ憎いなぁ」程度までしか進まないけどスター状態だから「だから殺せ」まで、「あいつ妬ましい(俺の作品のパクリであってほしい)」が「俺の作品をパクったな!」まで一気に進む。

 

だから妄想の「思考の激流」をどんな方向を付けるか、妄想のごく初期ではある程度自分でコントロールできます。

激しい感情に意識を向けると激しくなるのでなるべくどうでもいいこと、アカクラゲってなんで不死なんだろ、とか、ペヤングって年間いくつくらい売れてんだろ、とか考えられれば少しはスピードダウンできる。

でもだいたい妄想がほとばしるときは切羽詰まったときで、たとえば目の前で怒鳴り散らされてるときに思考を反らすのはほぼ不可能。よって思考の激流化と妄想はほぼ同時に起きる。たぶん当事者はもちろん精神科医ですらここを切り分けてる人はほとんどいない。

ただ、一般の人に説明するにあたってここを切り分けて理解することがわりと有効な気がする。統合失調症というのは突然わけのわからない声が聞こえる病気ではなくて、普段抑圧している激情が表面化することであって、患者は異常者なわけではなく、幻覚幻聴の芽はだれでも持っている。

 

そういう意味で、「ルックバック」という漫画に出てきた殺人者の描写は統合失調症としてではなくて「創作者の誰もが持っている負の部分」の具現化で、だからこそ創作者を描くあの漫画において殺人者は災害でも通り魔でもなく「俺の作品をパクった」と主張しなくてはならなかった。あれは理不尽な死ではなく、創作する自分自身と地続きの存在による死だからこそ、創作に嫌悪を抱き創作を捨てる夢想をして(あるいは創作を捨てた並行世界が存在して)それでも嫌悪を内包しつつ前を向く話であって。

 

だから私はあれを精神疾患への差別を助長するような方向にもっていってほしくないなと思っています。

京アニの事件しかり、やまゆり園しかり、そのほかいろいろな事件を「頭のおかしい異常者のやったこと」として切り離してしまえば、「ルックバック」は差別を助長する表現となります。でもそうじゃなく、人間は追い詰められれば簡単に狂う。狂気の芽は誰もが等しく飼っていて、それとどう向き合っていくか、そういう方向性に持っていってほしい。

 

 

 

 

 

 

ここから自分用記録。

私の幻覚幻聴ですが、怒声と暴力の飛び交うめちゃくちゃな修羅場で疲労が限界突破したときに起こりました。

普段めんどくさくなると気絶して強制終了するので、場数を踏んでる割に経験値が少ない。でも気楽に気絶できるのは私の生への執着が極端に薄いからで、なんかもう周りがヒートアップしてるといろいろどうでもよくなってきて、もう好きにしちゃっていいから決まったら起こして。みたいになる。

でもそのときは私一人の問題ですまなくて、私が死ねばこいつらも死ぬ、ここで死ぬわけにはいかん、みたいなわりと人生初の状態で、経験値ゼロのくせに修羅場に飛び込んでしまったのでアドレナリン的なものがどばっと出すぎてスター状態になった。

 

なんか、ざざーっと無意味な音声が聞こえる、というか、聞こえるはず、というか、なんというか、ジョーズのポスターを見たら脳内で「デーデン♪」が自動再生されるみたいな、「ここにこの音入るやろ!用意しといたやで!!」と脳が勝手に幻聴を再生しだす、みたいな。レモンをみたら唾液が出るのと似てるかも。

それでまぁその時、目の前に怒鳴り散らす人がいたんですが、「この人の顔って節分の鬼のお面に似てるなぁ」と思ったら脳が「よっしゃこの人鬼な!顔のところに鬼の画像貼っといたる!」みたいな。もう最終的に全ての人類が鬼、みたいなところまで思考が飛躍する。

それで怒鳴り散らしてる人が「殺してやる」的なことを口走ったら脳が「おっ殺されるやで!こいつ刃物振り回すやで!」と勝手に刃物と血しぶきの画像を追加する、みたいな感じでどんどんどんどん余計な画像が増えていってしまいには何が現実で何が私の脳が作り出したものか区別がつかなくなって、周りの人全員鬼の顔に見えて誰が誰だか分からなくなってきて、なんかもういろいろめんどくさくなって強めの睡眠薬を飲んで強制終了した。どうにでもなーれ☆

つかみ合いの修羅場の中突然カバンから睡眠薬を出してかみ砕いて意識を落とすという伝説ムーブをかましたせいでいまだに仲間内でネタにされるけど、でもあんなんめんどくさい以外何物でもないじゃん。疲れてたし。むしろみんなよくあんなのにいちいちつきあってあげれるね?

そのあと目が覚めたら病院で、でもまさかの内科に運ばれてて、なんでや、ってなった。内科だと早く退院できていいけど。後でちゃんと精神科も行ったけど高ストレスによる一時的なものでしょうで済まされた。

 

教訓としては、あのときの敗因は「守るべきものがある」と思ってしまったことなので、人間いつなんどきでも自分と自分の守りたいものを放棄して逃避してもよいように覚悟を決めておくのが精神安定の秘訣かなと思います。